未成年者略取・誘拐罪とは、以下のような特徴を持つ犯罪です。
- 未成年者をその生活環境から不法に離脱させ、自己または第三者の事実的支配下に置くこと。
- 暴行・脅迫を手段とする場合を「略取」、欺罔・誘惑を手段とする場合を「誘拐」と呼ぶ。これらを合わせて「拐取」と呼ばれている。
- 未成年者に限らず、監護権者に対して行われた場合でも「拐取」に当たる。例えば、監護権者に嘘をついて未成年者を連れ出す行為も「誘拐」に該当する。
- 行為者には故意が必要であり、未成年者を成人と誤認していた場合は故意がないため、同罪は成立しない。
- 保護法益については、未成年者の自由、監護権者の監護権、未成年者の安全など、学説上の対立がある。判例は折衷説の立場を取るとされているが、一定の批判もある。
- 法定刑は3月以上7年以下の懲役とされている。
このように、未成年者略取・誘拐罪は、未成年者の自由や安全、監護権者の権利などを保護するための重要な犯罪規定といえます。
親権者(監護権者)である配偶者が、急に保育園に現れてお子さんを連れ去った行為は、未成年者略取・誘拐罪の構成要件に該当する可能性が高いと考えられます。
最高裁の判例では、親権者(監護権者)による連れ去りであっても、以下の事情から社会的相当性が認められず、違法性が阻却されないと判断されています。
- お子さんがご自身のもとで安定して生活しており、特に連れ去る必要性が認められないこと
- 配偶者の連れ去りの態様が粗暴で強引であること
- 幼いお子さんが自身の生活環境を判断・選択する能力がないこと
配偶者の行為については、未成年者略取・誘拐罪が成立する可能性が高いと考えられます。
親権者(監護権者)であっても、必要性や相当性を欠く連れ去りは、犯罪的行為として評価されることになります。
ご自身は、配偶者の行為が未成年者略取罪に該当するため、刑事告訴を行うことができます。
刑事告訴とは、被害者や親族が警察や検察に対して犯罪事実を申告し、加害者の処罰を求める手続きです。警察は管轄に関わらず、告訴を受理しなければならず、迅速に検察官に関連書類を送付します。検察官は告訴人に対して起訴の有無を通知し、不起訴の理由を説明する義務があります。
ただし、警察が何らかの理由をつけて告訴の受理を拒むことがあるので、告訴状に証拠を添付して提出するのがよいでしょう。配偶者がお子さんを無理やり保育園から連れ出した点は重要な証拠になります。
さらに、お子さんの安全が懸念される場合は、告訴前に警察に注意を促したり、児童相談所に相談することも検討してください。必要に応じて、子の引渡しの審判や人身保護法の適用も検討しましょう。お子さんの保護が何より重要です。
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